2021年4月11日日曜日

「チェンバロお披露目コンサート」 チェンバロお披露目コンサートを終えて

 「チェンバロお披露目コンサート」 チェンバロお披露目コンサートを終えて

日時:2021年3月27日

会場:啄木舎サロン

演奏:三橋桜子

昨日3/27は音楽工房啄木舎にとって、記念すべき日となりました。🎊

自作スピネット(小型チェンバロ)の完成披露コンサートを、三橋桜子先生をお招きし、盛会の内に終える事ができました。

コロナ禍の中、開催延期を余儀なくされましたが、スタッフ、参加者様、桜子先生、色んな方々の御協力により開催する事ができました事、心より御礼申し上げます。🙇

1号器のチェンバロ完成以来、3年目にしてやっと2号器のスピネットお披露目となりました。

何度も失敗を重ね、挫けそうになりましたが、温かい励ましや、オルゴール作家さんの御協力も頂き、オルゴール付のスピネットとなりました。

動画にも投稿しておりますので、ぜひ覗いて見て下さい🤩

チェンバロの連弾は、美しい糸がいくつも重なり合い流れていくようでとても不思議でした。

チェンバロ連弾


その他の映像です。








2021年4月3日土曜日

「オリジナルなチェンバロを製作するということ」 チェンバロお披露目コンサートを終えて

聴く人:Y-K

2021年3月27日、チェンバロお披露目コンサートを無事に終えることができました。
コンサートから、数日が過ぎ、改めて谷口さんからチェンバロのお話を拝聴に伺った次第です。

「私の木工人生、最後に本物を作りたいと願い、このチェンバロを作りました」
チェンバロに視線を移し、愛おしそうに谷口さんが仰います。
「木工職人として多くの作品を作ってきたけれど、納品期限や採算を考えると、本物を作ることができなかった。だから、最後に谷口照恭オリジナル、これぞ、本物と納得できるものを作りたかったのです」

このチェンバロは細かな部品一つ一つから、谷口さん自身が作りだしたものです。




すべてオリジナルをという無謀と情熱と凄み


気恥しそうに譜面台を手に取り、実はこのチェンバロを作るのに失敗や変更により、チェンバロ2台分の材料を使っています。そして樹種はウォールナット、チェリー、キハダ、朴、ブナ、カエデ、チーク、松、(以上は本体・脚) ドイツトウヒ(響板)。多くの樹種を吟味しました。
その譜面台を拝見しますと、濃淡の違う樹種を貼り合わせた綺麗な寄木細工です。

「実はこれもたくさん材料を使ってしまって、細い木しか残っていなかったのですよ」
私のような素人から見れば、寄木細工の方がずっと素敵だと思うのですが。

お話は続き、一工程を進むのに三回は繰り返したとのことです。
それぞれの部材の寸法、チェンバロはたくさんの部材で作られています。ですから、それぞれ、たった0.1ミリでも寸法が違えば、大きな違いが生じます。

これが弦を弾く爪の付いた、ジャックという部品です。
数ミリ幅の木片に細かな細工が為されています。細い穴を正確に開け、スプリングを取り付けます。小さな爪が上がるときに弦を弾き、下がるときは弾かないように爪を引く仕組みになっています。寸分たがわない爪が52個並びます。
これこそ、職人の凄みだなぁと思います。
(52本のジャック作成に3倍もの試作を作られ、100個近いジャックが残っているのでしょうか、お守り代わりに欲しいですね。もっとも、谷口さんのことですから、薪ストーブの燃料になって、焼き芋や焼きリンゴと変わっているでしょうけれど)




友人たちの協力


チェンバロの上蓋を開けていただきました。綺麗な鳥が描かれています。
「孔雀です、白色の」

谷口さんの言葉に、改めて拝見します。波のような52本の弦の向こう美しい白孔雀が描かれています。 オルゴール作家 ゆのんさんが描いてくださったとのこと。

蓋とネームプレートの彫刻文字は、友人清水明さん作とのことです。
暖かい友人の気持ちがこのチェンバロを素敵に彩っています。




底板を合板にせず、無垢のキハダ板にしたわけ


「合板が悪いわけではないのです」
谷口さんがチェンバロの底板に視線を移し仰います。チェンバロの底板に合板を使うことは不思議でも何でもありません。いえ、合板の方が歪みも少なく音も安定します。
どうして、無垢のキハダにしたのか。
「私の願いはこのチェンバロがいつまでもあり続けるということなんです」
合板は薄い板を何枚も交互に重ね、接着剤で一枚の板にします。この接着剤が劣化したらどうなるでしょうか。壊れてしまいます、つまりはそれがそのチェンバロの寿命となるわけです。
「100年、200年、300年と素敵な音楽を奏でるチェンバロがあります。私はこのチェンバロも長く生かせてやりたいのです」
合板を使えば、到底、100年は持ちません。でも、無垢の板であれば長い年数を越えていくことが出来るのです。

「私の木工人生、最後に本物を作りたいと願い、このチェンバロを作りました」
最初の谷口さんの言葉を思い出しました。

ひょっとしたら、谷口さんにとって、このチェンバロは子供のようなものなのかもしれません。親が子供の行く末を幸あれと願うのと同じなのかもしれません。




(無垢 原木から切り出した角材や板です。風合いや質感に優れています)